公益社団法人 全国私立保育連盟

保育のひとくふう

「何かを描きたい」「何かを作りたい」「何かを表現したい」子どもたちのそんな思いを実現することができるように製作ゾーンを設けています。

そこには作りたいと思ったときに道具や素材を自分で取り出せるように、必要なものをいつでも用意してあります。空き箱や食品の容器、散歩で見つけてきた木の実といった材料だけでなく、ハサミやテープ、のり等も常に置いてあります。

製作ゾーンを使える時は、子どもたちはそこへやってきて自分の作りたい物を作ったり、絵を描いたり、塗り絵をしたりしています。一人でじっくりと絵を描く子がいたり、みんなでワイワイおしゃべりしながら協力して作品を作る子がいたりと、子どもたちの取り組み方は様々です。

そしてそこで出来たものはできるだけ作品として飾るようにしています。そのことが次の作品への意欲につながったり、また他の子の作品を見て参考にしてみたりと、子どもたちの「やってみたい!」という気持ちがより高まるような環境構成をいつも考えています。

環境の装飾などを考えるとき、なるべく和の物、地元の物を活用するようにしています。例えば窓には障子を取り付け、それを通して柔らかい光が差し込んでくるようにしています。

また、手ぬぐいを使って暖簾を作ったり、さらには地元の伝統工芸品である和紙を使ってランプシェードを作って遊びのゾーンで使用したりもしています。

例えば、障子を通した柔らかい光が癒しの効果があると言われています。そうした独特の効果はもちろん大事にしたいことですが、それ以上に、自分たちの住んでいる日本のものや地元の伝統工芸品といった和の物に日常の中で接することのできる環境にしていきたいと考えています。自分は日本に住んでいる、島根県の中の○○市で生活をしているといった所属感を持つことは、自尊感情を高めるためにも大切なことで、それが子どもの自発的な活動につながっていきます。

自発的な活動は子どもの発達のために非常に重要なことです。そんなことから、環境を考えるときはどんな風に和の物が使えるかを考えるようにしていて、子どもたちが生活の中でそれらを見たり触れたりできるように工夫しています。

園では、どんぐりの植樹を数年前から行っています。身近にいる私たち大人がもっと自然保護について真剣に考え、子ども達に伝えていきたいということから始めました。

年少さんが種となるどんぐりを拾いに園外に出かけます。どんぐりが木から落ちると虫や動物たちが食べ、糞としてまた土に戻り、土に住む微生物の餌となり、良い土になり、木々たちが育ちます。そのような自然のサイクルに、子どもたちも体験を通して気付いていきます。

一年後には葉がつきます。職員・子ども達と水やりを手伝います。畑のように食物がなるわけではなく、きれいな花が咲くわけでもなく、地味な葉っぱだけで水やりも忘れがちになることもありました。

けれど、どんぐりを育てていること、植樹を行うこと、何よりも自然を大切にしていく気持ちにつながると信じ、子ども達に伝え続けています。

2年かけて保育園で育てたどんぐりの苗を年長さんが園の代表として植樹に行きます。年長さんの保護者にも参加していただき、子どもと一緒に植樹をします。

5年後、10年後、20年後・・子ども達と一緒に大きく成長してくれていることを願いながら、この活動を続けています。

 

 

この夏、オリンピックに子どもたちが少しでも興味を持くれたらといいなと思い、ある仕掛けが登場しました。

世界にはいろいろな国があり、人がいて、スポーツにもいろいろな種目があります。また、同じ日本に住む選手のみなさんが真剣に競技をしているということを感じてほしいなというそんな思いから生まれたものです。

 

まず、オリンピック開会式の前に保育園に手作りポスターとオリンピックまでのカウントダウンカレンダーが貼られました。また、日本のメダルの獲得数とその種目を目で見える形にして、室内にそれとなく飾ったりもしました。

朝の会などでもオリンピックの話が話題になり、家庭でも話題になり、ご家族でテレビの前で観戦したりと、子どもたちも次第にオリンピックに興味を持ち始め、遊びにも少しずつ変化が見られるようになりました。

制作ゾーンでは世界の国旗を描いている子や、お手製のメダルを作っている子がいたり、積み木ゾーンでは「ロンドンの街を作りたい」という声が上がり、ロンドンの町並みの写真を見ながら積み木でなんとか作ろうとしている姿もありました。

子どもたちも保育者も楽しみながらオリンピックと関わった時間でした。

1964(昭和39)年に開設し、間もなく50年を迎える歴史ある保育園です。

創設時より、毎朝の裸マラソンを日課としており、『丈夫なからだ、やさしいこころ、自分で考え行動するこども』を保育目標にしています。

更に、近年ではクリスマス前の一か月間、地域貢献事業として『クリスマスイルミネーション』を実施。地域に住む一般の方々にも無料で園庭を開放し、毎年多くの方が訪れています。

伝統にとらわれることなく、常に斬新で進取の気風に富んだ保育園作りに勤しんでいます!


 

園庭のあり方について職員みんなでいろいろと考え、実践しています。

登る、降りる、飛ぶ、渡る、匂う、関わる、感じるなどが体験できるように遊具を工夫したり、季節に合わせた植物や野菜を園庭の中に植えたりと五感を刺激する様々な要素を園庭にちりばめていきたいと思っています。

まだまだ、これからの取り組みではありますが、変化していく園庭の一部を紹介します。

 

ケヤキの木で通称バランス橋なるものを作ったり、丸太を組み合わせた遊具を作りました。丸太の遊具では、「ひょいひょい」と軽快に渡っている子もいれば乳児さんたちは丸太に手を添えて、足場を確認しながらゆっくり渡っている姿があります。

ケヤキのバランス橋は高さもあり、木が細い部分もあったりするので、挑戦するどの子も慎重です。バランスを取りながら何度も何度も挑戦しています。

 

園庭の中にある小さな畑にはハーブや青じそがあります。他にもいくつかの植物があり、匂いを嗅いだり、だんだんと育っていく様子がよく分かる畑になっています。植物の色合いもとってもいいんですよね。

見ているだけで落ち着いたり、豊かな気持ちになる気がします。

 

私たちの保育園では毎年テーマを決めて保育を行っています。例えば「自然」とか「地域を知る」といった感じです。

今年度は「世界を知る」というテーマで様々な活動が行われています。毎月取り上げる国を決め、その国のあいさつや歌を紹介したり、特徴的な料理をみんなで味わってみたりしています。

5月はイタリア月間で、近所のピザ職人に来ていただきピザ窯作りからピザ作りまでみんなで行いました。6月はフィリピン月間で、フィリピン出身の保護者に協力してもらい、フィリピンの家庭料理をみんなの目の前で作ってもらいました。8月はアメリカ月間で、ALT教諭としてアメリカから来られている方に来ていただき、その方の得意なワイルドライスパンケーキをみんなで作りました。

世界のことを知識として知っていくのではなく、いろんな国のことに興味をもち、そこから様々に関心が広がっていけばという思いで取り組んでいます。

テーマを1つの切り口として、子どもたちの楽しさがより増していくことを期待して、保育者も楽しみながら取り組みの計画をしています。

当園は、保育環境に可能な限り家庭の機能を取り入れるようにしています。

ハード面では、保育室を家庭のようにダイニング・寝室・プレールームに分けて使用しています。そうすることで、子ども一人ひとりの遊びや摂食のペース・午睡時間などを保障することができます。各部屋に職員を配置し、昼食を終えた子どもから順次、午睡部屋に移動。

その後、目が覚めた子どもから保育室に移動するという動線を確保することにより、子どもを時間やデイリープログラムなどおとなの都合で急かしたり、不必要に遊びを中断することがなくなります。

一方、ソフト面では、老若男女さまざまな年齢層の職員構成にしています。短大を卒業したばかりの20歳の保育士から、今年で80歳を迎えるおばあちゃんまで、総勢44名(うち男性は3名)の職員が保育にあたっています。

厳しい保育士や優しい保育士、あわて者やのんびり屋さん、気が利く人や利かない人……。子どもや親も十人十色であるならば、保育者もそうである方が関係づくりに無理がありません。

子どもたちが、お父さん・お母さんと一緒に過ごすことができない時間を安心して過ごせる「もう一つのおうち」でありたいと思っています。

当園では、子どもにいろいろな体験をさせる時、『道具』は『本物』を使わせるようにしています。

園の畑で採れた野菜を使ってクッキングをします。その時使う包丁は大人と同じものです。また、6月に近くの海に潮干狩りに行って来ました。この時も大人物の熊手を借りました。

毎年7月に園のお祭りをしています。子どもたちが担ぐお神輿は、平成5年に購入したものです。同じ市内の神社の神主さんに来ていただいて御魂入れ式を行いました。魂の入った本物のお神輿です。重さがかなりありますので、お父さんたちに一緒に担いでもらっています。秋には数珠玉をたくさん収穫し、針と糸を使ってお手玉作りをします。

子どもは玩具でも勿論たくさん遊びますが、大人がやることを真似する時は、玩具ではなく、大人と同じものでやりたいものです。玩具でごまかすのは子どもに失礼だと思っています。子どもも『本物』を持つととても真剣に集中して取り組みます。当園では、子どもたちの気持ちを尊重して畑の水撒きや草取りなどは『お手伝い』ではなく『お仕事』と呼んでいます。

薪・島根県

2年前くらいから薪を大量に使うようになりました。毎月のカレークッキングや飯ごうでのごはん炊きだけでなく、畑で野菜がとれたらその場ですぐに茹でて食べたりしますし、寒い季節になったら毎日の様にたき火をしたりと、とにかくたくさんの薪を使います。このように火を使う体験を私たちは大事にしています。

使い方を間違えなければ、火はとても便利なものです。料理には火が欠かせませんし、身体を温めてくれる優れものです。火の危険性を伝え、その上で扱い方や便利さを体験することで、そこから子どもたちは火の特性を学んでくれています。一部の子どもではありますが、マッチを使って上手に最初の火をつけてくれる「火の名人」まで出てきました。

日常的に火とつき合う中で火の熱さも当然学んでくれているので、むやみに火に近づいたり周りで騒いだりすることもありません。何事も体験が大事です。そうした体験に欠かせない大量の薪の用意はいつも保護者が協力してくれています。薪割りだけでなく、薪小屋まで作ってもらいました。その作業の様子も子どもたちは見ることができるので、火を使うことに対しての関心は更に深くなっているように思います。