公益社団法人 全国私立保育連盟

保育のひとくふう

コロナウィルス感染拡大により登園自粛から1カ月が過ぎようとしている頃、お家にいる子も登園している子もお友達に会えず淋しい思いをしているのだなと感じることが多くなりました。
そこで、“ きっずノート”の連絡帳機能を利用して、例年楽しみにしている『こどもの日の集い』ができないかと考えました。
園からこいのぼりの製作キッドを郵送し、お父さんやお母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんと作ってくれた、こいのぼりの作品やお家の方と一緒に楽しく作っている様子を写真で連絡帳機能から送ってもらいました。
   

いつも利用している“ きっずノート”からなので保護者の方も手軽に投稿でき、また受け取る園側では、誰から送られてきたか、どんな写真が何枚送られてきたのかが直ぐにわかり、みんなの作品を素早く編集してホームページで展覧会を開催することができました。


子ども達は、お友達の顔が見られたり、大人はコメントに励まされたりと大好評でした!“きっずノート”のおかげで園と家庭だけではなくみんなを繋ぐことができました。
このこいのぼりの様に子ども達の元気な姿が早く園に戻ってくることを願っています。

本園では、5年前に従来の一斉保育を見直し、乳児クラスで1人1人を丁寧に保育する育児担当制を導入、合わせて全クラスで子ども1人1人が自分の好きな遊びに没頭できるコーナー保育を採り入れてきました。





職員間でのミーティングや研修を重ね、園全体で工夫し改善していく中で、安心して遊び込める子ども達が増え、子ども同士のトラブルや個別対応が必要な子が激減し、保育教諭の保育に対するゆとりややりがいが生まれてきています。



職員業務効率化を目指し、日々の保育記録は、写真を活用したドキュメンテーションに移行。記録としてだけでなく、保護者への保育の発信としても活用しています。このアイディアは若い保育者から出たもの、保育の質の向上を継続していくために職員間でのコミュニケーションを大切にしながら新しい先生達のアイディアにも耳を傾けていく大切さを感じています。

 

保育環境のなかで、自然環境は欠かせないものです。

当園は、武蔵野の面影が残る雑木林に続く園庭があり、樹木、花、土は身近にありますが、小川のせせらぎのように、自然の水に触れる環境がありませんでした。水の環境が欲しいとかねてから思っていたところ、日本郵便の寄附金付き年賀はがきの補助金をいただけることになり、ビオトープを整備しました。井戸を掘って、ガチャコンポンプ(手押しポンプ)も設置しました。

ビオトープには、田んぼがあり、6月に園児たちが田植えをした稲が育ち、稲刈りの季節になりました。子どもたちが作った「かかし」も無事その役割を果たして喜んでいるようです。
2018年2月末から1週間シンガポールを訪問し、現地の保育者と交流する機会がありました。2016年、2017年の2回の全私保連「シンガポール保育視察研修」で訪れたMy First Skoolの幹部と日本から参加した保育現場の皆さんとで、保育者の役割、子ども達の自律、将来に向けて身につけておくべき非認知スキルについて語り合い、お互いの保育現場の課題や解決法について大いに語り、交流することができました。

シンガポールといえば、四季がなく「暑い、もっと暑い、とても暑い (Hot, Hotter, Hottest)」の3種類の気温しかなく、年中暑いという印象を持たれている方が多いと思います。実際、今回の滞在中の気温は28度から33度と日本の夏を思い出させる気温でした。それでもホテルやレストランでは冷房が効いており、寒く感じるくらい。南国を訪れるとだいたいこんな感じ、と行かれたことのある方は思われることでしょう。

さて、保育園はどうか?今回見学した公団住宅やオフィスビルに囲まれた5園では、すべて冷房は入っていませんでした。窓を開け、天井から吊り下げられた多くの大型ファンで空気を循環させて、室内を快適に保っています。同時に、給水器や水筒は多く目につきました。 本部の事務担当者に聞くと、熱波が続き気温が上がり冷房をつけなければいけないときは、年間に10日程度。あとの日は、換気で十分とのこと。職員の皆さんも、子ども達も暑いことは気にする様子はなく、日本からの訪問者だけが「暑いね」でした。

夏になり暑くなると、すぐに冷房。熱中症予報を気にしながら、窓を締め切って、寒いくらいに冷房をつける、これって成長期の園児には本当に必要なのかな?大人の皮膚感覚で冷やし過ぎてはいないかな、「窓開けと扇風機」で済む時間帯もあるのではないか、と考えさせられました。
 
今年で、7年目になる「ハンガリー保育視察研修」に11月11日から1週間参加し、5箇所の乳児・幼児保育園を見学しました。見学先では、まず園の特色についてレクチャーを受けます。そのあと、自由遊び、設定遊び、昼食から午睡への流れを見学しました。

国が変われば習慣が変わることは、海外に出掛けたことがある方はお気づきになったことと思います。食事の時に使うのが「お箸からナイフとフォークに変わる。」これは一番わかりやすいと思います。保育室の物的環境については、「こんなの見たことない」というほどの大きな違い、驚きはないです。

今回、ハンガリーで食事の場面を見せていただいた幼児保育園では、研修参加者の誰もが「あれ?」と気づいたのが園児の使うスプーンの大きさ。ハンガリーでは、昼食は具沢山のスープと果物。ジャガイモなどのお野菜をたっぷりのせた大きなスプーンを縦にして口に運び、美味しそうに食べていました。

質疑応答の際に「園児のスプーンはなんであんなに大きいのか?日本は、幼児用のもっと小さいスプーンだけど」と質問しましたが、大きいスプーンが当たり前のハンガリーでは、質問の意図がいまひとつ通じなかった様です。

自分や自国の常識が世界の常識ではないですよね。「違いに気づき、そして多様性、違いを受け入れる」は保育者にとって重要です。単なるスプーンの大きさ違いの話ですが、自分の頭の硬さ、思い込みに気づかされました。

1昨年に続き今年で2回目になるシンガポール保育視察研修。昨年訪れた園では、年長児がデジタルカメラでコマ撮りした粘土の人形を動画に編集して、タイトル、字幕、音楽をつけ、YouTubeにアップしたプロジェクトの発表や、PCがずらっと20台程並んだ「パソコン部屋」を見学して、幼児教育にICTがそれこそ“道具”として取り入れられている様子に度肝を抜かれました。

2今年は、プログラミングの初歩的な概念をてんとう虫型のおもちゃを目的地に向けビニールシートに井桁状にプリントされたレールの上を走らせる遊びをしている園児を見かけました。
いずれの光景も、PCやデジカメといった道具が身近にあって、それを手にと って「遊びを通しての学び」でありPCやデジカメの使い方の習得、使いこなすこと、それを使って何かをしなければならない、ということが目的ではないところが子どもたちの姿から見て取れる。

3「園長先生がiPadを買ったけど、それをお部屋でどう使ったらいいんだろう?」というケースがありがちな今日この頃の保育現場ですが、「(表現活動の教材として)クレヨンや画用紙、のり、iPad、デジカメ、パソコン」と考えると、気楽に取り組めるのではないでしょうか? 「高価=もったいない」では本当にもったいないです。

01ソウルの幼稚園では、ESD(持続可能な開発のための教育)活動が自然に行われています。

2016年6月に世界幼児教育・保育機構(OMEP)が韓国ソウルの名門女子大学、梨花女子大学で開催した世界大会に参加し、発達障害児プログラムとICT活動を中心に分科会で各国から集まった保育者による発表を聞きました。

02また、公式プログラムとして郊外の幼稚園訪問があり参加しました。園到着が4時頃になり、すでに多くの園児が降園した後の時間帯であり、園児が遊び、学ぶ様子を見ることはできませんでしたが、物的環境については十分に観察することができました。

訪問した 幼稚園には3階建で園庭は屋上。屋上には折りたたみプール、菜園、それに大型のソーラーパネルが取り付けられていました。また、クラスのゴミ箱はリサイクルに対応しており、その暖かい色使いから園生活の中に自然に組み込まれていると感じました。

032階フロアの共通スペースには、イグアナなどの小動物が豊富に飼育されており、観察力や飼育を通しての食育、命の尊さが学べる工夫がなされています。

ESDは身近なところから、長続きする形で。そして、小さい頃からが大切だと実感しました。

理念の木ドイツ・ミュンヘン市の園を視察してきました。この園は園長先生が13年前日本を訪問し、以後その体験を基に園改革をしてこられました。

園の理念が木の形で表されています。枝や葉っぱの部分には、「健康」「運動」「科学」「音楽」「芸術」など子どもたちの活動が表示されます。木の太い幹部分には、「学ぶことを学ぶ」「遊び」「生きる力」「社会文化の多様性と個々の統合」「開かれた園業務」とあります。

理念の木の幹創立20年目を迎えるこの園は、「遊びは子どもの職業」との考えのもと、保育士からの一方的な指導方法から保育士と子ども、そして子ども同士の交流を大切にする園となってきたとのことです。

困った時には『バイエルン教育プラン(BEP)』を紐解き、子どもの選択を保障する子ども主体の保育を実施しています。お部屋が遊びの種類で分けられ、動と静、内と外、多様な感覚を養う園環境となっています。

保育室の風景ところで、「理念の木」の根っこ部分は0歳から3歳までの育ち。人生の始まりを 子ども自らがしっかりと作り上げることを目標としています。「乳児から異年齢」での関わりを重んじ、コーナーでの自発的な遊びを大切にしています。生命力豊かで、力強い人生を送るための始まりを木の根っこで表現しているのですね。

民主主義を大切にし、子ども観を職員間で共有し、BEPに則った保育を実施する園の見学から学ぶところがたくさんありました。

K-6・シカゴ

 1今年7月に米国シカゴ郊外の小学校を訪問しました。友人の奥さんが4年生の教員で、夏休み中で静まりかえった校舎内を案内してもらう機会に恵まれました。アメリカの街中をドライブしていると“K−6”とか“K−9”といった看板を掲げた学校を見かけることがあります。“K”はKindergarten(幼稚園)で、6は6年生、9は9年生(日本の中学3年生)を指します。私が訪れたのは“K−6”の公立学校です。

 この4月に保育所から幼保連携型認定こども園に移行し、園運営・年間指導計画策定に際して、小学校への“接続”をこれまで以上に意識するようになり、いわゆる「小1の壁」の解決策のヒントを探しに行ったわけです。

2 私個人も90年代はじめにロサンゼルス郊外に前職で転勤になり、当時2歳、3歳の子供を帯同し現地校に通わせましたが、その学校も“K−6”のシステムで、幼稚園は小学校の校舎の一角にあり、物理的には「小1の壁」は存在せず、心理的にも小学校への進学は親としてなんら気にかけることもなかったし、子供達にとってもストレスはなかったと思います。

 今回訪れたシカゴの学校も“K”は1年生の隣にありました。小学校の教室は、日本のように“教壇+黒板”が上席(先生の場所)で、縦横綺麗に並んだ机と椅子は生徒の場所といった明らかな区別はなく、また生徒が寛ぐソファーや本棚などがどの学年の教室にも置かれ、生徒の席は黒板の前に半円形にレイアウトされています。

授業もディスカッション中心。タブレットでプレゼン資料を生徒同士が作って、プロジェクターで黒板に投影してさらにディスカッションを進める方式を4年生では取っているとの話でした。先月、園のある市内の小学校の公開授業で2年生が九九を合唱したり、黒板に書かれた九九の穴埋め問題に答えを順番に教壇に上がり書き込む姿を見て、壁の原因を見つけたような気がしました。

写真1耐震工事による園舎の全面改築工事に伴い、新たなスペースが園内に誕生しました。

写真3その名も「デン」

デンとは英語でDEN、野生動物の巣、ねぐらという意味でそこから狭い空間という意味でも用いられている言葉です。

人間は本能的に狭い空間を好むそうで、この本能は胎児の時に母親のお腹の中にいる時に作られるそうです。

私たちの園のデンも畳1畳程の狭い空間で、1Fフロアーと2Fフロアーに1ヶ所ずつ設けています。そこは心が温まる場所、安心してくつろぐ事の出来る空間となっています。

子ども達の成長過程において、友だちとのトラブルやいざこざ、自分自身との葛藤等様々な場面が登場します。

写真2そんな時この空間に入ることで緊張をほぐし、気持ちをクールダウンする事で、又次の活動へと気持ちを切り替え、元気に取り組んでいます。

子ども達にとって、保育園は昼間の「お家」。ほっこり・リラックスできる空間があってもいいのではないでしょうか。

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