公益社団法人 全国私立保育連盟

保育のひとくふう

「園庭は子どもの創造性を豊かにする世界」として、「サウンド・ガーデン(音の庭)」が設置されているのが、英国のブリストル市(ロンドンから急行バスで約1時間)にあるFナーサリ-スクールです。子育て支援センターも有するFナーサリースクールには、アフリカ、中近東、カリブ海、インド、中国等の文化背景を持つ子どもが在籍しています。

一人ひとりの子どもの立ち振る舞いから、リズム感や音感の違いの面白さに気づいた先生方と彫刻家で子どもと木工等を始めアート活動を繰り広げているピーター・ムーアハウスさんが、従来の遊具や砂場というお決まりの園庭の考えを180度変換!して、子どもと共に子どもの身体を音で表現する庭へと話し合い、「音の庭(サウンド・ガーデン)」を創ったのです。

もとからある楽器に出会うことももちろん大切なことですが、身近な生活にあるモノが音を持っている、リズムがあるのだ、ということを気づいた子どもたちは、バケツ、フライパン、おたま、ケーキの型等々、一つひとつのモノと出会い、音のオーケストラを奏でています。こうした光景を見た保護者もどんどん参加しているそうです。モノが持つ音に魅了された子どもたちは、無茶な音(騒音)を出すのではなく、子ども同士、仲間の創りだす音に耳を傾け、オーケストラ演奏となっているそうです。

 

子どもの創造性と想像性を最大限活かすアート工房(空間)として、室内に「アトリエ」があることは、様々な書物等で紹介されています。

なんと、「アトリエ」は、室内だけではありません!園庭も子どもの「アトリエ」なのです!0~2歳児70名が在園するP乳児保育所。

子どもが、園庭や近くの公園で出合った「葉っぱ」「小枝」「木の実」「石」等々と子どもの知性と感性が躍動感をもって対話した様子がそのまま展示されているのです。

あらかじめ「○○を作る」という保育士主導の活動ではなく、子どもがモノ(素材)とじっくりと向き合い、五感を通して触れたプロセスが見えるのです。園庭は、現代美術のギャラリーです。

ついつい、次の活動や降園の時間になると、「お片づけ」としてしまいがちですが、P保育所の園庭アトリエは、子どもとおとなが相互に語り合い、学びあう環境を保障しているのです。

こうした積み重ねが、世界的に高い評価をうけている生活自体がアートである心と目を育んでいるのでしょう。

ハンガリーでは排泄や食事など育児に関する世話をとても丁寧にします。

見学中、おむつ交換にひとりあたり15分くらいかけていることもありました。職員の配置は日本とほぼ同じで1.2歳児混合クラス12人で保育士2人、2クラスにひとり助手がいます。トイレは、2クラスに1部屋ありとても清潔で美しく整えられています。そこに、おむつ交換台2台、便器2個がありました。クラスに各1つということです。

排泄の世話は担当の保育士がします。おむつ換えをしている間、保育士はずっと子どもに話しかけていました。「気持ちよくなったかしら」「こちらの足をあげるわよ~」「今度はこちらの足」すると、子どもも保育士の言葉に反応し足をあげて協力をしていました。

おむつの交換はいつも同じ手順で行なわれています。おしりを拭いたあと、交換台のとなりにある洗面台でお湯でおしりを洗い、クリームを塗ります(ヨーロッパでは水が硬水で皮膚が乾燥するため)。交換台から洗面台へ約半歩移動するときもおしりはちゃんとタオルでくるんでいました。小さな子にもスッポンポンでさっと移動するのではなく、大事に関わっていることが表れています。

こんな日々の中で自分が大切にされていることを実感し、自尊感情が育っていくのだと思いました。

私たちの保育園では約10年前に発足した保護者のお父さんたちによる「父親の会」の活動が続いている。

会の主な活動としては、園行事に係る力仕事や行事への自主企画での参加に加え、「パパと遊ぼう」と銘打った企画を主宰し、幼少期の、特に戸外での遊びの経験が少ない現代っ子の父親たちに、自分の子どもと一緒に遊ぶ経験を通して遊び方を学んでもらう、というねらいで段ボールを使った製作広場で大掛かりな道具が無くてもできる遊び、ザリガニ釣りやクワガタ採り等々の企画を主に週末に行ってくれている。

また、数年前から園のイメージアップと冬場の防犯対策を兼ね続いている、園舎や園庭の「イルミネーション(写真)」も近所で評判になっている。

さらに園庭環境を改善する目的で一昨年前には芝生化事業、昨年度は園庭の築山に「滝と池(写真)」造成、そして「ログハウス(写真)」建築と、子どもたちにとってうれしいプレゼントを届けてくれた。

このように頼りになるお父さんたちのさらなる活躍を今年も期待したい。

※写真の人物は父親の会会長と副会長

ハンガリー保育視察・体験研修で、6ヶ所の保育園見学をした中に、2ヶ所「塩の部屋」が設置されていました。

保育園の中に壁がすべて岩塩でできた部屋が設置されているのははじめて見ました。

喘息や気管支を強くしたり健康のためにあるそうです。子ども達は週に1度、30分ぐらいその部屋(10人くらいは入れる広さ)で遊ぶそうです。

ヨーロッパでは、昔から塩で造った特別な部屋でくつろぐ健康法が広く普及しているそうで、ハロセラピーとかソルトセラピーと言われています。

19世紀中頃、岩塩鉱山で働いている人たちに肺の疾患が少なく喘息にならないことをポーランドの産業治療士が気づき、1843年に塩クリニックが設立されそれは現在も続いているそうです。

また、第2次世界大戦末期の数か月に岩塩鉱山が避難所として使われ、中に入った何人かが喘息が軽減されたことに気がついたそうです。

その後、ドイツ・スイス・ハンガリー・ブルガリア・ユーゴスラビアなどで、岩塩抗にサナトリウムができたそうです。

科学的には1968年に西ウクライナのアレルギー疾患病院の研究成果により、科学的根拠が得られ、喘息治療法が確立されているそうです。

 

保育室の一角に小さな丸いテーブルが置いてあります。このテーブルは『なかよしテーブル』といって、ケンカが起きたとき、そこへ行って話し合いをするための場所です。

このテーブルの使い方について、子どもたちと話し合って決めた4つのルールがあります。そのルールとは「しっかりお話をする」「自分の気持ちを言う」「相手の話を聞く」「最後には仲直りをする」です。

以前は、喧嘩が起きると話し合いをするように促したり、時には保育者が仲裁役のような形で関わったりしていましたが、子どもたちに関わる力がついてきたこともあり、このテーブルを用意することにしました。

子どもたちがなかよしテーブルでやり取りを始めると、保育者はよほどのことがない限り関わることはありません。子どもたちは何も言わずに長い間じーっと向き合っていることもありますが、そのうちに自分の思いを言葉で主張し始め、相手の子もその思いをちゃんと聞いています。

そしてお互いに思いを伝え、聞いたあとは、すっきりとした表情でその場を離れていきます。このテーブルに向かう間に気持ちが静まるということもあるのか、あまり興奮することなくしっかりと会話をすることができています。

ここでのやり取りもコミュニケーションの大事な基礎になると考えているので、このテーブルは保育園の大事な場所と捉えています。

子どもは周りのものをよく見てそれを真似ることで、様々なことを学び成長していきます。

例えば赤ちゃんが最初に意識する家庭での大人の生活は、食事をする場面や料理をする場面だと思います。その様子を見て、その姿を真似て演じるのがごっこ遊びで、特に食事の真似や料理の真似をするのがままごと遊びと呼ばれるものです。ということで0,1,2歳児の環境はままごと遊びが十分に体験できるようにしています。

3,4,5歳児は次の段階として、自分の体験する世界の広がりに合わせて、外の世界の真似するようになります。家から外に出ていき、いろいろと地域の人と出会い、そして様々な仕事があることを知っていきます。

そして外の世界の大人の姿を真似して遊ぶようになります。家庭の中でも食事以外の仕事の様子に興味をもつようになります。これが3,4,5歳児のごっこ遊びです。

今は子どもたちが話し合った結果、病院ごっこをしようということになり、そのために必要な道具を製作ゾーンで作っているところです。家庭でもパソコンを使っている姿を見ているためか、パソコンも使いたいという意見が出たので、そのための場所も用意しています。

大きく広がった世界を真似したごっこ遊びを楽しんでくれることを期待しています。

絵本ゾーンにある、いろいろな仕事の現場を描いた絵本から、子ども達はいろいろな仕事に興味を持ち始めました。

そこで子どもたちに知っている仕事や興味のある仕事を聞いてみることに。すると、いくつかの名前が挙がりました。

その中から、美容師さん、マッサージ屋さん、お坊さん、大工さん、ケーキ屋さんと様々な職業の方、6名に来ていただき「お仕事体験」という取り組みを行いました。

それぞれをコーナーに分けて、子どもたちはその内容を体験しました。ノコギリや金槌を使ったり、座禅を体験したり、髪の毛を整えてもらったりと、子どもたちも本物の職人さんの技術に興味津々でした。

社会にはいろいろな職業があります。そして、いろいろな人が様々な価値観を持ち、社会を作り、助け合って生きています。私達は子どもたちに、そんな社会の一員であるということを感じてほしいと思っています。

今回は「仕事」の内容を体験するというものでしたが、 自分たちの周りにはいろいろな職業の方がいて、たくさんの「仕事」があることに興味を持ってくれたらいいなと思っています。

園では早速ごっこ遊びゾーンで美容師さんになりきった子どもたちが美容師さんごっこをしています。

「今の社会にはこどもが“こどもの時間”で過ごすことが難しくなってきている。」私たちはそう考えています。私たちを取り巻く環境はモノに溢れ、望むならば休みなく24時間サービスを享受できます。

とても充実しているように見えますが、そこには「大人のクリテリア(基準)」で作られたものばかりで、こども向けといいながら、与えられるモノやサービスはほとんどが完成されたモノばかり。こどもたちの純粋な疑問や興味の入る隙間のない世界。また早期教育という名の記憶と反復に頼った手法が、こどもたちの想像力やポテンシャルを引き出してくれるのか?少し考え込んでしまいます。

私たち大人は、もう一度こどもたちの言葉にならない声に耳を傾け“こどもの時間”に寄添いながら、今のライフスタイルに疑問を持ってみるべきなのかもしれません。

私たちの保育園では、「こどものクリテリア(基準)」とは何か?ということを見つめ直し、“Play First”をコンセプトにした生活を送りながら、感受性豊かで自律(autonomy)の心を持った、社会性の基礎力「自分で考えて行動する」力を導き出せるようにしたいと日々保育を考えています。

 

写真1

新しい園舎では園庭もガーデンエリアとグランドエリアに区分けし、身体的な発達とバランス感覚を養うように考えました。プールを廃し、ダイナミックに遊べる水遊びの場を設定しました。制作の部屋「アトリエ」を設け、こどもたちの自由な表現の場として展開します。

 

 

 

写真2

保育室では保育材料(おもちゃ)が、常にこどもたちの見える場所に置いてあるようにしています。遊びの意味を踏まえて、コーナー毎に遊びを区分けしてあります。幼児クラスでは1〜2ヶ月単位のテーマを設定して、テーマに則した遊びを取り入れています。

 

 

写真3

園では「保育室クリテリア」を設定して、こどもたちが自発的に遊べる環境作りを目指しています。

 

 

 

※写真はクリックすると大きく表示します。

火鉢・島根県

寒い時期になると登場するものに火鉢があります。最近は見かけることが少なくなった火鉢ですが、ストーブとはひと味違う暖かさですし、見ているだけでもなんとなく暖かくなってきます。火の扱いは気をつけなければいけないことがもちろんありますが、それを丁寧に教え、体験する中で学んでいくことも大事だと思っています。

この火鉢では暖まるだけでなく、みんなでついたお餅や地元で作られているスルメを焼いてみたりといろいろ活躍してくれていて、お餅がだんだん膨らんでいく様子をながめたり、スルメの焼けるいいにおいを楽しんだりもしています。使っている炭は地元の方が作っている炭で、燃えるときに「パチパチ、キンキン」と高い音が出るのですが、その音を静かに聞いている子どももいて、五感をふんだんに使う場にもなっています。

また、5、6人で火鉢を囲んで会話を楽しんでいる姿が頻繁に見られます。火を囲んでのんびりと楽しく話をするというのはたき火をしているときにも見られる姿ですが、たき火よりも火鉢を囲んだときの方が互いの距離が近く、話もはずみやすいようです。五感を刺激し会話も促してくれる、とても貴重な場になっています。