公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第19回③【最終回】

「まとめに代えて(2)触れられなかった大きな問題」
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)


双方の人格と人格の絡み合いが関係性の中身
 
 これまでの議論を振り返れば、保護者と保育者の接面に生じている様々な思いと思いの絡み合いは、単に保育者が保護者の大変さを優しく受けとめるかどうかの議論ではないことがわかると思います。まさに、双方が「自分を支えてほしい、自分はもう精いっぱい」と思っているのです。

 保護者の側にも、自分のこれまでの人格形成にかかわる自分史と今の対人関係の問題のすべてが背景にあり、それが「保育者への不満」のかたちで立ち現れてきます。同じことは保育者側にもいえて、保育者が保護者に対して十分に配慮できない裏には、難しい子どもを多数抱え、そういう子ども集団を少人数の保育者で保育していかなければならない厳しい現実があり、しかもそこに、保育者自身の人格形成にかかわる自分史と職場の対人関係の難しさが絡んでいるのです。

 そういう背景や事情を抱えた者どうしが、片や保護者として、片や保育者として、今、保育の場で出会っています。その人格と人格の絡み合いとしての関係性の難しさが、保護者にとっても保育者にとっても大きな問題なのです。けれども、今回の連載ではそこまでは深く入り込むことができませんでした。

 以上でこの連載を閉じます。長い間お読みいただき、ありがとうございました。

*この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていきます。