公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第16回③

「あー、お弁当おいしかった!」
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)


お弁当に込められたお母さんの愛情

 仕事を精いっぱい頑張っているKちゃんのお母さんにとって、確かにお弁当の日は辛かったと思います。大変な生活だとわかっているから、Kちゃんもお弁当の日のことをお母さんに伝えられなかったのでしょう。でも、何とか先生がお母さんにそれを伝え、お母さんも大変だといいながらもそれに応じてKちゃんのためにお弁当を作り、できたお弁当が嬉しくて、また美味しくて、Kちゃんのこの言葉になったのでしょう。普段は愛情を伝える余裕さえないような生活でも、お母さんにはKちゃんを可愛いと思う気持ちが十分にあり、それがこの日のお弁当に結びついたのだと思います。

 これは例外的なケースかもしれませんが、お弁当にお母さんの愛情が詰められるというのは、どの家庭にもあることではないでしょうか。温泉に連れて行った、遊園地に連れて行った、水族館に連れて行った等々、子どもが喜ぶことはいろいろありますが、お弁当に詰められたお母さんの愛情は、他の何ものにも代えがたいものでしょう。だから子どもは嬉しいのです。Kちゃんの「あー、お弁当おいしかった!」の言葉は、お弁当が美味しかったことを伝えるだけではなく、そこに詰まっていたお母さんの愛情が嬉しかったのでしょう。

 毎日の忙しさの中で、つい子どもを急せかしたり、思うようにしてくれないと叱ったりと、なかなか子どもと楽しい時間をすごす余裕がなく、子どももお母さんに愛情を求めても応えてくれないと思いがちです。しかしこのようなエピソードを読むと、お母さんも今度のお弁当の日には、子どものために愛情のたっぷり詰まったお弁当を作ってあげようと思うのではないでしょうか。

第17回は1月上旬に更新予定です。

*この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていきます。