公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第15回②

子どもは保育園で頑張っています
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

子どもは保育園で頑張っています

 自転車で園庭を何度も何度もぐるぐる回って、お母さんはいまどこまで来たかを繰り返し先生に尋ねるAちゃんを見ると、お母さんを心待ちにしていることがとてもよくわかります。朝は泣いての登園だったようですが、朝、何があったのでしょうか。それでも気持ちが切り替わると、元気に遊びます。でも、いつも楽しいことばかりではありません。友だちとの遊びで思いと思いが衝突してトラブルになることもあります。それを通して、自分にも友だちにもお互いの思いがあることに気づき、それを調整する術を少しずつ身につけていくのです。今日は先生に絵本を読んでもらって気持ちが紛れたのでしょうね。

 それから食事、午睡、午睡起きからおやつと保育園のいつもの生活の流れが続きますが、これも楽しいことばかりではありません。順番のトラブルがあったり、眠れなくて先生にトントンしてもらったり、いろいろあります。そうしてお母さんのお迎えを待つのですが、友たちのお迎えが次々にあって、自分のお迎えがなかなかだと、次第に心細くなってきますね。

 Aちゃんは、今日はお迎えが早かったようですが、その分、お母さんがいつお迎えに来るのか、今か、今かと待っていたのでしょう。そしてやっとお迎えが来た!その時の子どもがどんなに嬉しい気持ちになるか、それを読者のお母さんにも伝えたくて、Aちゃんの一日を紹介してみました。

 お母さんのお迎えを心待ちにしていたのに、お母さんの顔を見ると急に知らん顔をして遊び始める子もいます。それは待ちに待った気持ちの裏返しなのですが、そんな時に「ぐずぐずしないの!」と叱られると、子どもは辛いですね。

 また、今日の素敵な姿を先生からお母さんに伝えてもらうと、はにかんだような嬉しい表情を見せる子もいます。

 どの子も一日を頑張ってすごし、頑張ったことを認めてほしいと思っています。先生が「今日、○○ちゃんはこんな工夫をしてみんなを驚かせたんですよ」と褒めてくれて、お母さんが「そうだったの」と笑顔で認めてくれる…それは子どもにとって一番嬉しいことでしょう。

 お母さんもお仕事で大変でしょうが、子どもはみんな、保育園で一生懸命遊び、頑張ってすごしています。お迎えの折には、そのことをぜひ認めてあげてください。

第16回は12月上旬に更新予定です。

*この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていきます。