公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第2回①

子どもの「できる、できない」から、子どもの心に目を向けるために

鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

①お母さんの目が、子どもの「できる、できない」に向かうのは、なぜ?

 「早く○○ができるように」「早く聞き分けができるように」「早くみんなと同じ活動ができるように」と、お母さんの気持ちは、子どもの心に向かうよりも先に、子どもの「できる、できない」に向かっているように見えます。なぜそうなってしまったのでしょうか?

 確かに、「早く、早く」とお母さんがいってしまうのは、実際に生活が忙しく、朝も勤務先に遅刻寸前、夕方も家事の準備で時間がないからでしょう。実際、身のまわりのことくらいは自分でさっさとしてほしい、グダグダいわずに私のいうことをさっと聞き分けてほしい、というお母さんの気持ちもよくわかります。 

 また「できる、できない」の能力面に目が向いてしまう理由には、「まわりから、みんなよりも劣っていると思われたくない」「保育参加の際に恥かしい思いをしたくない」「早くいろいろなことができていないと、学校に上がってから心配」「競争社会で生き残るには、まわりの大人を見ても力がすべて」というような思いをお母さんが抱いていることもあるかもしれません。 

 こうしてみると、「早く、早く」も「できる、できない」も、実際にはお母さんの都合やお母さんの不安、あるいはお母さんの子育てについての考え方からきていることに気づきます。もちろん、お母さんは、そうしたことはみんな子どものためだと思っているはずです。子どものためにこそ、早くいろいろなことができ、率先して集団の流れに乗り、聞き分けよく振る舞ってほしいと。 けれども、それは本当に「子どものため」でしょうか?私の目には「子どもため」というよりも、お母さんの子どもの見方の問題、発達の考え方の問題、ひいては、お母さん自身の不安の問題がその背景にあるように見えるのです。 

>②できれば「よい子」に、悪くても「普通の子」に育てたい