公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第14回②

お母さんの自己肯定感は?
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

誰も認めてくれない、話し相手もいない…

 自己肯定感という言葉が巷に溢れる中で、ちょっとした不満を抱える人や少し自信をなくした人が「自分は自己肯定感がないのでは?」と過剰に反応し過ぎているのではないかという点に今ふれましたが、時間に追われる日々の生活の中で、誰にも認めてもらえない、話し相手もいない、仕事以外の生活の中で自分を必要としてくれる人もいないと思い込むお母さんが増えてきているのも確かです。

 一つ屋根の下で暮らしてはいても、夫婦間に今や会話もなく、夫から愛されているという実感も得られない、子育てもうまくいっている感じがないし、保育園の送り迎えなどでも話し相手になる人がいない、職場で「よくやっている」といってくれる人もいない、自分は誰からも認められていないのではないか…。

 お母さんがもしもこのような憂鬱な気分に陥っているなら、確かに「よーし、やってみよう」といった、自己肯定感から生まれる前向きの姿勢にはなかなかなれないでしょう。まさにこのような状態こそ、自己肯定感が立ちあがってこない状態、自己肯定感が乏しい状態、あるいは自己肯定感が傷ついた状態と考えてよいと思います。

 こうした負の心の状態に陥るのにはいろいろな理由があると思います。

 一つは、自分の不満をすべてまわりの人のせいにするなど、他の人を責めて、自分の問題として考えようとしない場合です。
実際、まわりの人を責める気分で生活していると、まわりの人の思いに気づけなくなり、そのためにまわりから顧みられなくなって、通常の対人関係が営めなくなり、まわりの人からの肯定的な評価が得られなくなってしまいます。

 もう一つは、幼い頃に愛情豊かな家族関係や良好な友人関係を十分に経験できず、そのために自己肯定感の根が十分に育たなかった場合です。このような人は、いつも他者からの肯定的な評価を得ようとし、自己肯定感を維持しようと努めますが、自己肯定感の根が十分でないために、相手から高い評価を得ても満たされた気持ちになれず、自己否定感に苛まれてしまうことが多くなってしまうようです。

>③何かに自信がないことは自己肯定感がないことではありません