公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第14回①

お母さんの自己肯定感は?
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

生活に張りがあれば…

 自分には信頼できる人がいる、自分を認めてくれる人がいる、自分を必要としてくれる人がいる…。そう思える人は自己肯定感を持てている人だといってよいでしょう。
 自己肯定感というのは、「それがある」と意識できる感覚ではありませんし、世間でいわれているような「ありのままの自分でよい」ということでもないと私は思っています。「信頼できる人」「自分を認めてくれる人」「自分を必要としてくれる人」、それらの人がいれば、その人はその生活の中で、きっと気持ちが前向きに動くに違いなく、それは一言でいえば、「生活に張りがある」感覚だといってもよいのではないでしょうか。私は、それが自己肯定感だと思っています。

 お母さんが子どもから「お母さん大好き」と思われ、夫から「愛しているよ」と言葉や態度で示され、また職場の同僚や友人から「よく頑張っているね、頑張っているあなたは素敵だよ」と認めてもらえるなら、たとえ子育てや日々の生活で多忙な毎日をすごしていて、自分のための時間や、ほっとできる時間が乏しくても、前向きに生きる意欲が湧いてくるに違いありません。それは、「自己肯定感がある」状態といってよいでしょう。

 確かに、仕事を持ちながら子育てもしなければならないお母さんの多くは、自分のための時間などとても持てないほど時間に追われ、余裕のない日々をすごしていることでしょう。それがいろいろなことへの不満につながって、子どもに当たり散らすことさえあるかもしれません。おそらく今述べたことは、程度の差こそあれ、仕事を持ちながら子育てをしているほとんどの人に当てはまると思います。

 何かの不満を持ったり、前向きの気持ちが動かない時があったりすれば、すぐさま自己肯定感がないかのような議論が横行していますが、私は、自分がまわりから認められ、必要とされていると感じられていれば、自己肯定感はあるといってもよいと考えています。

 ただし、不満や意欲の減退はその都度意識されますが、自己肯定感は「今それがある」というふうに意識できないものです。そのこともあって、「自己肯定感がない」ということが過剰に取り沙汰たされているということはないでしょうか。

>②誰も認めてくれない、話し相手もいない…