公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第10回②

子どもを「叱る」ことは難しい
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

怒りはエスカレートしやすい

 子どもが4、5歳にもなると、自分のしたことがいけなかったことは大抵の場合、もうわかっています。でも、お母さんが強く叱ると、子どもは自分を守ろうとして、理屈をいってみたり、嘘をついたり、ふてくされたりして、なかなか素直に聞き入れようとしません。そして恨みがましい目でお母さんを見て、「お母さんなんか、嫌いだ!」といい放ったり、大泣きになったり、逆に、小さく縮こまってしまったりします。

 そんな時、お母さんは腹立ちまぎれに、さらに子どもを責める態度を強めてしまう場合があるでしょう。「なぜ素直に自分がいけなかったと認められないの!」とか、「そんな態度は許しません!」というように、子どもと自分のあいだに溝をつくるような強い言葉の追い打ちをかけ、「ごめんなさいをいいなさい!」と、さらに怒りをエスカレートさせてしまうことさえあるかもしません。

 お父さんや、お祖母ちゃんがそばにいたりすると、「まあまあ、そこまで怒らなくても」と水入りになるでしょうが、核家族でお母さんと子どもだけでいると、どうしても立ちあがった負の感情をお母さん独りで抑えることが難しく、怒りがエスカレートして、怒鳴ったり体罰を与えるなど、虐待に近い状態さえ生まれかねません。

 叱ることは子どものためにも必要なのですが、その時に、お母さんが怒りをエスカレートさせないためにどうしたらよいかを考えておくことが、家庭の子育てではとても大事になってきます。

>③優しい母として生き残る─行為を叱って存在を否定しない