公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第9回①

心の育ちの中でも 信頼感と自己肯定感は必須のものです
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

信頼感と自己肯定感が育つ経緯

 子どもの育ちを目に見えるところで追いかけると、あれができた、これができたというところに目が向きますが、子どもがこれから大人に向かって成長していく上で欠かせないものとして重視してほしいのは、まわりの大人に対する子どもの信頼感や安心感、さらには子どもが自分について抱く自己肯定感です。

 信頼感は、まわりの大人が「養護の働き」の下で、いつも丁寧にかかわってくれることを通して、「この人が(お母さんが)いれば安心」、「この人は(お母さんは)いつもいい具合にしてくれるから大好き」と思えるようになることから、子どもの心に宿るものです。
 また自己肯定感というのは、まわりの人が自分のことを大事に思ってくれている、愛してくれていると子ども自身が確信することができ、そこから、自分は大丈夫なのだ、自分は大事なのだという思いが子どもの心に宿ることです。

 この重要な二つの心が育つ経緯を、図で説明してみます。保育通信5月号-図

 まず、信頼感も自己肯定感も、子どもを褒めれば育つかのような誤解が広がっていますが、外部から「褒める」という具体的な行為が与えられることが、これらの心が育つための条件ではありません。大人の心のもち方や心の動かし方が、子どもの心に流れ込んで、子どもの心になりかわるのです。大人の「愛している」という思いが子どもの心に流れ込んで、自分は愛されていると思った子どもは、愛してくれるお母さんは大好き、お母さんがいれば大丈夫と、お母さんへの信頼感を育む一方、自分は愛されている、自分は大事にされている、自分は大事なのだというかたちで、自己肯定感をもてるようになります。

 ですから、信頼感も自己肯定感も、大人の「養護の働き」(愛情)を離れてはその成り立ちが考えられないものです。「褒める」という行為の裏で動いている大人の本音の思い(愛情)が子どもの心の育ちにつながるのであって、褒めても愛する気持ちが動いていなければ、図中の下段の流れになって、大人への不信感や自分への自己否定感が心に宿ることになってしまいます。

>②「非認知的な力」を育てるといわれていますが…