公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第1回①

わが子は今、何を一番求めているでしょうか?

鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

①連載を始めるにあたって

 今、保育をめぐっては難しい問題が山積しています。
 社会的には、待機児童の問題があるかと思えば保育士不足の問題があり、それでいて保育の質を確保したいというように、保育行政も難題を抱え込んでいます。

 また保育の現場では、あれも教えてください、これもさせてくださいと、子どもに教育をしてくれるように強く求め、それに応えてくれる園を「質の高い保育をしてくれる園」と考える保護者がいます。そうかと思えば、もっと子ども一人ひとりの気持ちをわかって保育をしてください、集団の一員とまとめてしまわずに、一人ひとりの子どもの思いを大事にして、ていねいに保育をしてくださいと、保育園に求める保護者もいます。この二つのタイプの保護者ニーズにどのように対応するかは、どの保育園にとっても難しい課題です。

 このように、保育をめぐる難しい状況がある中で、子どもにとってはどのような保育が「子どもの最善の利益」につながるのでしょうか。それを考える時、私には今、保護者の皆さんに届けたいメッセージがいくつかあります。それはまた裏返せば、保育者に届けたいメッセージでもあります。

 今、「保護者の皆さんに届けたいメッセージ」と書きましたが、この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていくことにします。届けたいメッセージにはどうしても呼びかけ調の文章が入ってきますが、その時「保護者」という言葉は、呼びかける相手としては抽象的に響いてしまうからです。もちろん、ここでの「お母さん」という言葉は、「お父さん」という言葉と置きかえてもらっても一向にかまいません。

 さて、これから何回かに分けてお母さんに伝える私のメッセージは、お母さんの気持ちが楽になる、お母さんの都合に合致する、というような、お母さんが喜ぶ中身には残念ながらなりそうにありません。しかし、どのように子育てをすれば、子どもが本当の意味で幸せになり、結果としてお母さんの幸せにつながるかを考える上では、きっと役に立つ内容になるだろうと信じています。

>②今、わが子がお母さんに本当に求めているのは何だと思いますか?