公益社団法人 全国私立保育連盟

保護者

今、保護者に届けたいメッセージ 第6回①

「育てる」とはどういう営みでしょうか?

鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

「育てる」とはどういう営みでしょうか?

 「子育て」とは、いうまでもなく子どもを育てることですが、では、「育てる」とはどういう営みなのでしょうか。

 おっぱいを飲ませる、オムツを替える、外気浴をさせるなど、乳児の頃のいわゆる「育児行為」がそれであることはもちろんです。しかし乳児期を過ぎて、しつけが入ってきてから後の「育てる」とは何でしょうか。身辺自立にかかわる一連のしつけに始まって、大人の願いを伝え、あれをさせて、これをさせてと、いわゆる「できること」を増やしてあげることが「育てる」ことだと考えられることが多いことは、この連載の初回でお話ししました。そういう考え方が乳幼児期の「教育」の考えに連なるものであることはいうまでもありませんが、子どもにとって必要な大人の「育てる」営みは、次々に何かをさせていくことだけでしょうか。

 赤ちゃんとして生まれた子どもが一人前の大人になるまでの過程で、まわりの大人がしてあげなければならない一連の働きかけが「育てる」営みです。その「育てる」営みに欠かせないものは何でしょうか?

 初回では、そこに「愛情」が含まれることを指摘しました。そのことを踏まえて、大昔から連綿と続いてきた子どもを「育てる」営みを振り返ってみると(今の幼児教育のために、学校教育のためにという議論をいったん棚上げにして)、子どもを「育てる」営みには、時代を超えて、大きく「養護の働き」と「教育の働き」の二つがあったことを指摘できるように思います。そこで、この二つの働きについて簡単に振り返ってみましょう。

>②「育てる」とはどういう営みでしょうか?