公益社団法人 全国私立保育連盟

研修報告

青年会議 第11回特別セミナー

開催日程
平成28年2月23日(火)
開催場所
東京都・浅草ビューホテル

01平成28年2月23日(火)浅草ビューホテル(東京)にて全私保連青年会議主催による第11回特別セミナーが、「リーダーの視点」~果たすべき役割とこれからの広報戦略!~をメインテーマに、講演会、パネルディスカッションの二部構成で開催されました。

第一部では、矢藤誠慈郎氏(岡崎女子大学教授)による講演「保育の質を高める人材育成」〜組織マネジメントの視点から〜と題し、ご講演いただきました。

経営とはお金を儲けようとすることではなく、限られた資源を活用して最大限の成果をあげようと努力や工夫のことである。したがって、保育施設に「経営」は欠かせない。保育施設が経営を意識してきていないとは言わないが、経営の対象が何かについては十分に理解されていないかもしれない。最も重要なのは組織の「価値」を経営(マネジメント)すること。保育施設で言えば、質の高い保育をして子どもの最大限の育ちを保障することができていなければ、保育施設としての価値を問われることになる。では、どうすればいいのか。現場の先生が良い保育を考えて出来るようにならなければならない。一人で考えるのではなく、組織で考えていく必要がある。

02第二部では、パネリストに大江恵子氏(りとるぱんぷきんずグループ 統括園長)、瀬木葉子氏(株式会社保育のデザイン研究所 代表取締役)、志賀口大輔氏(なごみこども園 園長)、脇淵竜舟氏(全私保連青年会議 副会長)、第一部でご講演いただいた矢藤誠慈郎氏にコーディネーターで再びご登壇いただき、パネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、リーダーとして果たすべき役割と広報戦略を、それぞれの立場から具体的な例も含めて、お話をいただきました。

リーダーの資質と人材育成について、人の人材育成の前に自らの人材育成、尊敬されるリーダーを目指す。リーダーの資質として、①「前向き、素直、謙虚」であること。②明るく元気であること。③「情熱、志、信念、感謝」をもつ。④決断力と責任感、そして覚悟をもつ。⑤至誠の心で成長を続ける。⑥感情をマネジメントする。また、リーダーの視点として、職員には求めるよりも認めること(美点凝視)が大切である。そして、リーダーは「何を目指し、何を成し遂げることが使命なのか」 、「組織」「保育」「広報」など、園運営にかかわる様々なことを考え、「それは何のためにするのか」という原点、常に本質は何であるのかを見極めていくことが大切である。

保育士不足について、保育士定着施策調査報告書のデータをもとに話をされました。

全体として、効果が高かったのは「職場環境の改善」と「職場の人間関係」の施策。人間関係に関する施策として、効果が高いのは相談や異動等の事後対応よりも、「日常の指導・心構え」「教育・研修」等の「予防」。また人材育成の施策としては、「外部研修参加支援」を導入している事業者は多いが、「社内研修の実施」の方が効果は大きい。

「これを行えば圧倒的な効果がある」というような施策があるわけではないが、様々な施策を取り入れ複合的に対応することが大切で、園長等のマネジメント、保育者の良好な人間関係構築等に関する指導・研修が保育者定着につながると言えよう。

03テーマにある広報戦略の広報の意味を考えると、PR(パブリックリレーションズ)である。PRとは、一般社会と良好な関係を構築し、それを維持すること。伝えたいことをやりたいように表現する広告とは根本的に違う。広報・PR活動に必要なのは、客観性と公共性。①「言いたいこと」ではなく、「求められていること」②徹底的に我を知る。③「自分の利益」ではなく「みんな利益」④「よく見せる」ではなく「ありのまま」⑤「ありのまま」だけど、「心地よい演出」を。⑥「結果」「効果」にこだわりすぎない。⑦「派手に一発」ではなく、「地味に継続」⑧あふれんばかりのサービス精神。⑨みんなが喜ぶことをやる。

例えば、クルマを買うときのことを思い浮かべてみましょう。納車までは毎日のようにカタログを眺めたりwebサイトを見たりします。でも、手元に届いた瞬間それらから遠ざかります。こども園でも同様で、最もアクセスするのは「まだ直接的な関わりを持ってない人」です。もちろん在園児のためのコンテンツもある程度は必要ですが、紙媒体のおたよりなどがあるわけですからあくまで二の次です。ここを明確にすることが機能的なデザインにつながります。

04具体的な取り組みとして、浜松市のこども園では、4つの機能が一体となった複合施設を開設している。①就労支援機能業、②子育て支援機能、③カフェ、④おもちゃと絵本の販売。地域の需要を拾っていくことで、子育て支援ひろばの利用者数は2年ほどで、5倍に跳ね上がった。どこでも真似できるケースではないが、ひとつのPRの形として、成功した例ではないだろうか。

この度のパネルディスカッションのテーマを考えると、どの先生も奇を衒っている訳では無く、極めてオーソドックスな事をしています。しかし、多様なアプローチをいくつも試し、ひとつがダメだったからと言ってやめてしまうのでは無く、出来ることを少しずつ増やしていくことが大切なのだということを教えいただいたように思います。